楽園のカンヴァス(新潮文庫)原田マハ [本]
ルソーは大好きだから、期待は大きかったのです。でも、どうしても登場人物に感情移入できませんでした。ティムはルソーを愛するキュレーターという設定なのに、偉くなりたいという出世欲にまみれていてるし、織絵もキャラクターが定まらず、かたくなで無愛想な学者肌だったかと思うと、突然、女性性が前面にでてきたり。ミステリーの要素もあまりに偶然が多すぎるし、謎の数が無駄に多すぎて、こちらの気持ちは冷めていくばかりでした。期待が大きすぎたのかもしれませんが、ちょっと残念な1冊でした。
ストーリーとは関係なく面白かったのは、花形キュレーターには美術館の支援者やコレクターの夫人たちを夢中にさせる色気が必要だ、という業界話。確かに日本の美術館や博物館の学芸部長さんも魅力的な男性が多いのです。ミステリーとは違うけど、ひとつ謎が解けました。
印象に残った言葉
ひょっとすると私は、アートばかりを一心にみつめ続けて、美と驚きに満ちたこの世界を、眺めてはいなかったんじゃないのだろうか?─ 233ページ
自分がやりたい展覧会を完璧に実現させるためには、美術に関する知識やセンス以上に、人海戦術と交渉力、そしてときには色気が必要になってくる。肉体的な色気ではなく、夫や若いツバメにはない知的な色気が。─ 72ページ
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