蔡國強 宇宙遊 ー<原初火球>から始まる(国立新美術館) [美術展]

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蔡國強 宇宙遊 ー<原初火球>から始まる
2023年6月29日(木)~8月21日(月)
国立新美術館

蔡國強(さいこっきょう)は2015年の横浜美術館の展覧会が初見でした(そのときの記事)。作品だけでなくその言葉に強く惹かれたのを覚えています。今回の展覧会もご本人が書いた解説文(わりと長文)が強い支柱となっています。

大きな展示空間の壁際に1980年代の初期作品から順を追って今に至る火薬を使った一連の作品や映像が並んでいます。作品だけでは何を表現したいのかさっぱりわかりませんが、解説文を読むとその背景をうかがい知ることができます。その思考は宇宙まで射程に入った壮大さで簡単には近づけません。ただ、とても人間味のある難解さなのです。だから分からながらフレンドリーに楽しめます。

外見もアーティストというよりは地に足の着いた商売人みたい。魚屋や酒屋の前掛けや鉢巻が似合いそうです。とてつもなく魅力的な人なんだろうなと思います。福島県いわきの人たちとの長年にわたるつながりも心を打ちます。「満天の桜が咲く日」の花火には映像でも度肝を抜かれました。けた違いな規模と美しさ、桜だけでなく津波もイメージさせられます。それを見つめるいわきの人達の笑顔。「火薬」という人を傷つけるために使われる道具も蔡國強の手にかかれば無念の魂を鎮めることができるのです。





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豊乗寺の普賢菩薩像(東京国立博物館 国宝室) [仏像・仏画]

豊乗寺 普賢菩薩像
2023年6月6日(火)~7月2日(日)
東京国立博物館 国宝室

東博に寄託されている豊乗寺(ぶじょうじ)の普賢菩薩像(国宝 平安時代)が国宝室で久しぶりに展示されました。鳥取県智頭町(ちずちょう)の豊乗寺に行ったのは2022年GW。鳥取旅行中にふと豊乗寺が鳥取にあることを思い出して訪ねてみたのでした。豊乗寺は空海の実弟・真雅による開基と伝えられる密教寺院。国宝の普賢菩薩像のほかにも多くの文化財を伝えていますが、今では訪れる人も少ないようです。真言宗だからでしょうか、境内の真ん中に高野槙の巨木がそびえていました。そんな風景を思い出しながら鑑賞しました。

截金は手を尽くした繊細さだけれど、菩薩のお姿や白い象の体格はわりとどっしりとしています。お顔もしっかりと頬が張っていて男性的。普賢菩薩というと女性好みの痩せた優しいお姿と美しいお顔がイメージされますが、豊乗寺の普賢像は違っています。都と地方の違いなのか、それとも時代なのか、どちらにしても贅を尽くして作られた素晴らしい仏画でした。

それにしても東博もすっかりコロナ前に戻って外国人含めて人が多く、閉館時間になっても展示室は混みあっていました。日の長い夏の間は夜間開館を再開していただきたいです。そして空調が弱くて蒸し暑かった…もう少し適温にしていただきたいです。なんだかリクエストばかりになってしまいました。


コウヤマキ.jpg
「豊乗寺 高野槙」


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ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画(太田記念美術館) [美術展]

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ポール・ジャクレー フランス人が挑んだ新版画
2023年6月3日(土)~7月26日(水)
太田記念美術館

こんなにおしゃれな浮世絵があるなんて初めて知りました。フランスパリに1896年に生まれたポールジャックレー。3歳の時に来日して10代で日本画を学び、40歳前から新版画を発表、太平洋戦争を経て64歳で亡くなるまで日本で暮らしたそうです。まだまだ知らないアーティストとの出会いがあるんですね。

描かれるモチーフはとても型破り。理想化した美人ではなく、旅行先の人物や隣人を男性や老人を含めてキャラクタリスティックに描いています。旅行先はサイパン、グアム、朝鮮、中国…、エキゾチックなくせのある面貌は目を惹きつけるし、パステルと原色の美しい色彩感覚もたまりません。ひどく旅情をかきたてられ、海外に行きたくなります。特に「北風、韓国」の背景に描かれた「北漢山」。この山の連なりをこの目でみたい、できれば登ってみたいとの衝動がふつふつとわいてきました。これまでソウルになんてこれっぽっちも興味がなかったし、「北漢山」の名前も知らなかったのに、不思議です。

後期が始まってから行ったのですが、これは前期も見ないといけない展覧会でした。ひどく後悔しています。そして、絵葉書がほしかったのに「これ!」と思うものがなかったのも心残りです。

北風、韓国.jpg
「北風、韓国」


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