初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」(国立劇場) [古典芸能]

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初春歌舞伎公演「通し狂言 世界花小栗判官」
2018年1月3日(水)~1月27日(土)
国立劇場

小栗判官(おぐりはんがん)と照手姫(てるてひめ)の物語を知ったのは、岩佐又兵衛の「小栗判官絵巻」。ヒーロー(小栗判官)が大活躍し、そのピンチにはヒロイン(照手姫)がけなげに支える、まさにエンタメ絵巻なのですが、笑っちゃうぐらい荒唐無稽なエピソードがてんこ盛り。愉快、痛快な絵巻でした(そのときの記事)。中世以降に説経節や浄瑠璃に取り込まれ、大流行したというのもわかります。今回、国立劇場の初春公演で歌舞伎の「世界花小栗判官」がかかると知って、これは外せないと見に行きました。

そうしたら、オリジナルのストーリーがすごく不自然に改変されていてびっくり。歌舞伎にはいろいろな約束事があるそうで、絵巻にはない「家宝探し」やヒロイン照手姫とライバルお駒の「三角関係」を中心に話が進んでいくのです。オリジナルから取り入れられているのは「小栗判官の荒馬の曲馬乗りの場面」と「照手姫が動けなくなった小栗判官を乗せた車を引く場面」ぐらい。絵巻でのクライマックス場面を歌舞伎の定番ストーリーに組み込んだのが歌舞伎版の小栗判官なんですね。いいところ取りともいえるけれど、あの絵巻のハチャメチャ感はすっかり失われていました…。さらに、原作は荒唐無稽ながら小栗判官と照手姫の純愛が胸を打つのですが、歌舞伎は三角関係のせいで台無しです…。

又兵衛の絵巻のイメージが強すぎて、どうも見方が辛めになってしまいましたが、小栗判官とは別物だと思えば、役者さんたちはさすがに達者だったし(特に中村梅枝さん、片岡亀蔵さんがよかったです)、舞台演出も華やかだったし、最後はお正月らしく手ぬぐい投げがあったりして、なかなか楽しい歌舞伎鑑賞でした。


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北斎とジャポニスムーHOKUSAIが西洋に与えた衝撃(国立西洋美術館) [美術展]

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北斎とジャポニスムーHOKUSAIが西洋に与えた衝撃
2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
国立西洋美術館

「へぇ、こんなところに北斎!」と、推理小説の証拠集めみたいに吃驚しながら鑑賞しました。ドガの踊り子は北斎漫画の相撲取りと同じポーズ。まさか相撲取りがバレリーナに化けるなんて思わないから、よく見つけたものだと感心します。セザンヌのサント・ヴィクトワール山は大好きな絵だけれども、今まで北斎の富嶽三十六景と重ねてみたことなんてありません。でも言われてみれば、サント・ヴィクトワール山って富士山とそっくりです(いつか実物を見てみたい)。目から鱗でした。いや、並べてみても「ホントかな」と疑ってしまうような例もあったりしましたが、それでも浮世絵が想像以上に西洋画家、特に印象派に大きな影響を与えていたことを実感できました。逆に言えば、日本人が印象派を大好きなのも当たり前ってことですね。

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年の初めに日向薬師へ [寺・神社]

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年の初めに日向薬師(神奈川県伊勢原市)のご開帳に行きました。ご本尊は平安時代前期に作られた鉈彫り(なたぼり)の薬師三尊像。秘仏なので年に3回(正月3カ日、1月8日、4月15日)のご開帳です。金沢文庫の展覧会でお会いして、いつかはお寺に行きたいと思っていました(そのときの記事)。小田急伊勢原駅からバスで20分、景色はすっかりのどかな山里です。源頼朝や北条政子も鎌倉から参詣したと伝えられますが、馬や籠に乗ってきたのかしら…。明治の廃仏毀釈までは日向山霊山寺と称し、大寺院だったそう。近くには大友皇子のお墓と伝えられる場所もあります。

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バス停近くの山門から本堂まではうっそうとした森の中を15分ほど登ります。ご本尊の薬師三尊像は宝物館にいらっしゃり、その他に阿弥陀如来や四天王、十二神将など20体以上の仏像が収められています。左右にお祭りされている鎌倉期の阿弥陀如来坐像と薬師如来坐像は2メートル以上の大作。ここが修験の中心だったことを想像させました。ただ、残念なことにお会いしたかったご本尊の薬師三尊像には近寄れる状況ではありませんでした。というのも、宝物館の中には椅子がずらりと並べられ、ご住職が参拝客に着席をうながしながら説法を続けています。会場は満席、説法は全く終わる気配がありません。ご本尊はほとんど注目もされず、拝まれることもなく、宝物館の上座にひっそりと納まっていらっしゃいました…。ご開帳というよりご住職の説法会といった様相です。

モヤモヤした気持ちでお寺を後にし、帰りは七沢温泉方面に山を下りました。日帰り入浴で温泉につかり、「ZUND-BAR」の行列に並んでAFURIのラーメンを食べて帰路につきました。

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博物館に初もうで(2018年1月、東京国立博物館) [美術展]

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2018年1月2日(火)~1月28日(日)
東京国立博物館

毎年恒例の「博物館に初もうで」。今年は戌年だからかわいい犬の作品がたくさんありました。猫派の私としてはいつか猫特集もしてほしいなぁ。まずは、お正月らしく梅の花から。200年の時を超えて響き合う仁清と香山。梅の香りがただよってきそうです。


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重文「色絵月梅図茶壺」(仁清、江戸時代・17世紀)


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重文「黄釉銹絵梅樹図大瓶」(初代宮川香山、明治25(1892)年)


次は、平安時代の仏教美術。

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国宝「釈迦金棺出現図」(平安時代・11世紀、京都国立博物館)
秋に京博の国宝展で拝したばかりなのに、こんなに間を開けずに再会できるとは!おまけに写真撮影までOKなんて、お正月から太っ腹、嬉しい限りです。よみがえったお釈迦様、おめでたい。京都の天台宗長法寺に伝来し、第二次大戦後に松永安左エ門氏が入手、氏の没後、国に寄贈されたそうです。


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重文「不動明王像」(平安時代・12世紀、愛知・甚目寺)
不動明王なのにとっても優美です。截金文様が良く残っています。


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「十六善神図像」(玄証筆、平安時代・1179年、松永安左エ門氏寄贈)
私の大好きな玄証さんが描いた白描画です(関連記事)。強面だけど愛嬌のあるかわいいお顔。これも国宝の「釈迦金棺出現図」と同じく松永安左エ門氏の寄贈なんですね。


動物編

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重文「蓬莱山蒔絵袈裟箱」(法隆寺献納宝物、平安時代・12世紀)
蓬莱山を背負った大亀と空を飛ぶ松喰鶴。おめでたい。


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「朝顔狗子図杉戸」(円山応挙、江戸時代・1784年)
やっぱり応挙のわんこはかわいい。


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「犬を戯らす母子」(鈴木春信筆、江戸時代・18世紀)
これ犬かなぁ…。黒ネコにも見えない?


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「鳥獣戯画模本(甲巻)」(山崎董詮模写、明治時代・19世紀)
ネコもいた!


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重文「鼠志野鶺鴒文鉢」(美濃、安土桃山~江戸時代・16~17世紀)
ネコといえば、ネズミ!




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2017年の総まとめ [美術展]

2017年もたくさんの美術展に足を運び、社寺をめぐることができました。印象に残っている事柄をまとめておきます。

・展覧会
春に奈良国立博物館で「快慶展」、秋に東京国立博物で「運慶展」がありました。天上の高みを目指した2人の仏師。至福というより息苦しくなる展示空間でした。天才運慶は仏を半ば強引に人間界に現出させようとし、完璧主義の快慶は見ている私たちを天上界に導こうとしているようにみえました。

サントリー美術館の「絵巻マニア列伝」は、絵巻物そのものでなく、絵巻物を愛した「人とエピソード」に焦点をあてているのが面白かったです。今に伝わるのは「もの」だけですが、文化を作っていくのはマニアと呼ばれる「ひと」なんですね。

マニアつながりで、なかなかマニアックな
中世宇都宮氏-頼朝・尊氏・秀吉を支えた名族-(栃木県立博物館)
室町時代のやまと絵-絵師と作品-(東京国立博物館)
あこがれの明清絵画(静嘉堂文庫美術館)、典雅と奇想(泉屋博古館分館)
も印象に残っています。

・ご開帳
神奈川の秘仏開帳巡り ①西方寺(横浜市港北区)②龍峰寺(海老名市)
笠間のご開帳巡り
三浦半島二大霊場大開帳
今年は関東地方のご開帳にしばしば足を運び、地方仏ならでは魅力に目覚めました。

・古典鑑賞
文楽鑑賞「平家女護島」(国立劇場)
歌舞伎鑑賞「義経千本桜 渡海屋大物浦」(歌舞伎座)
能楽鑑賞「清経」(国立能楽堂)
長年の課題だった古典鑑賞。平家物語に題材をとった演目を選んで足を運んでみました。すごく面白いとは思えなかったのですが、それがわかってなぜかちょっと安心もしました。大好きなのに機会を逃しているんじゃないかって心配が払しょくされたので。


2018年もたくさんのお気に入りと出合えますように。

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没後60年記念 川合玉堂-四季・人々・自然- [美術展]

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没後60年記念 川合玉堂-四季・人々・自然-
2017年10月28日(土)〜12月24日(日)
山種美術館

2017年最後しめくくりの展覧会は川合玉堂展。田植え、鵜飼、水車、山に沈む夕日、なんてことないからこそ今では失われてしまい、もう玉堂の絵の中に見るしかなくなってしまった日本の自然豊かで穏やかな原風景。玉堂の絵を通して、古き良き日本を旅しているような気になりました。「いい日旅立ち」のメロディーが聞こえてくるよう。でもその風景自体がなくなってしまったら、玉堂の絵に郷愁さえ感じられなくなってしまうのかしら…。作品自体を伝えていくことの大切さを思うことはあっても、描かれている風景を守っていくことに危機感を覚えることはありません。これこそ玉堂の絵ならではの効力です。(関連記事


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光彩の巧み(五島美術館)、フランス宮廷の磁器 セーヴル(サントリー美術館)  [美術展]

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光彩の巧み-瑠璃・玻璃・七宝
2017年10月21日(土)〜2017年12月3日(日)
五島美術館

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フランス宮廷の磁器 セーヴル 創造の300年
2017年11月22日(水)~2018年1月28日(日)
サントリー美術館

中国の皇帝が愛した七宝、ヨーロッパの王侯貴族が愛したセーヴル磁器、どちらも色彩豊かで手が込んでいて精緻。でも、なぜかうっとりしません。豪華な器類に気が向かない性向はどうしようもないみたい。絵画や彫刻と違って実用品だから、現実に所有することを想像してしまい、“使いづらそうだから要らないなぁ”などと思ってしまうのです。神様ではなく自分自身のための豪華さになんだか自慢されているような感じがするのもよくないです。

その点、私の大好きな鍋島焼(関連記事)は手は込んでいても器形はシンプルだし、大きさは規格化されているし、セットで作られるし、日常使いに適していますね。鍋島藩から将軍家への献上品だから、自分の自慢じゃないのも良し。器類の私の鑑賞ポイントは「豪華さ」よりも「使いやすさ」と分かりました。

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