運慶-鎌倉幕府と霊験伝説-(神奈川県立金沢文庫) [美術展]

金沢文庫 運慶展.JPG
運慶-鎌倉幕府と霊験伝説-
2018年1月13日(土)~3月11日(日)
神奈川県立金沢文庫

昨秋に東京国立博物館で開催された運慶展は運慶の代表作が勢ぞろいし、質量とも圧倒的でした。一方、金沢文庫の運慶展の運慶作はたった3点。予算も人もかけ方が違うのだから、かないっこありません。でも代表作をなぞるだけでは物足りない私のような仏像好きには、運慶仏を深く考えることができる充実の運慶展でした。

まずは、瀬谷先生(金沢文庫の学芸員)の月例講座「運慶と鎌倉幕府」に参加。運慶の本当の代表作の多くは今は失われてしまっていることを知りました。瀬谷先生は運慶の幻の三大代表作を東大寺大仏殿諸像(1567年の兵火で焼失)、東寺南大門金剛力士像(1968年の火事で焼失)、鎌倉大倉薬師堂十二神将像(たびたびの火事で焼失)とし、運慶作品の全像を考えるには消失作品を無視できないとのお話し。さらに源頼朝が平泉の毛越寺を模して鎌倉に建立した永福寺(二階堂を中心に薬師堂、阿弥陀堂などを備えた壮大な寺院。1405年に焼失後に廃絶)に運慶の最大の作品群があったのではないか、と推察されています。まるで推理小説みたいに刺激的。今は失われてしまった運慶作品に思いをはせつつ、運慶ゆかりの仏像と対面しました。


重文 十二神将立像(神奈川・曹源寺、鎌倉時代)
たまに東京国立博物館の常設展で展示されていて顔なじみのお像ですが、永福寺薬師堂の1/2の模刻像なのだそう。
十二神将立像 曹源寺.jpg


金剛力士立像(個人蔵、江戸時代)
仏師の西村公朝氏が偶然に京都で見付けて購入したという30㎝ほどの金剛力士立像。七条仏師が東寺南大門の金剛力士像をひな形として作成したものらしいです。

厨子入薬師如来坐像及び両脇侍立像・十二神将立像・四天王立像(神奈川・宝生寺、鎌倉時代)
16cmの小さなお厨子に19体もの精巧なミニチュア像が所狭しと収まっています。十二神将は大倉薬師堂の形式、四天王は東大寺大仏殿の形式だというから、幻の三大代表作の2つがひとつの厨子に収まっていることになります。明治維新までは鶴岡八幡宮に伝わる霊宝だったらしく、運慶と鎌倉の関わりを考える上でも貴重な作品。


今回の展覧会にはよく知られている大型の運慶作品は出品されていません。それでも今はない幻の代表作を想像させられるような仏像が選抜出品されていて、作品を見ずして天才運慶のすごさを感じられます。


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墨と金 狩野派の絵画(根津美術館) [美術展]

墨と金.JPG
墨と金 狩野派の絵画
2018年1月10日(水)~2月12日(月・祝)
根津美術館

根津美術館が所蔵する狩野派絵画の展覧会。コレクション展だから超有名な作品はないけれど、だからこそ日常使いの筆さばきで絵師の個性があらわれている気がします。

目がとまったのはやっぱりお気に入りの狩野派絵師ツートップ、狩野尚信と狩野山雪。この2人は対照的な画風ですが、今まで同時に2人の作品をみたことはないと思います(関連記事)。狩野尚信の「山水花鳥図屏風」は余白が多くて何が書いてあるのかよく分からない。ほとんど抽象画。一方、狩野山雪の「藤原惺窩閑居図」は1つ1つのモチーフをこれでもかってほど明確に描き込んでいます。尚信の絵には直線はなく、山雪は定規で引いたみたいな正確さで直線を描いています。同じ狩野派を名乗っていいのか?と思うほど個性全開な尚信と山雪。ますます好きになりました。

今回のNo1はなんといっても狩野山雪の「梟鶏図」。山雪の絵は偏執的な描写にこちらの気持ちまで不安定にさせられるのが常なのに、この「梟鶏図」はめずらしくほのぼの系です。とぼけた梟と意地悪そうな鶏が向き合っておしゃべりしているみたい。それもかなりブラックな相談事です。悪だくみを考える鶏に入れ知恵する梟といったところでしょうか。絵本になりそうな1枚です。

梟鶏図.jpg


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