入江泰吉の眼 ~ファインダー越しの古代奈良~ [美術展]

入江泰吉.JPG
2014年7月5日(土)~9月28日(日)
入江泰吉記念奈良市写真美術館

美しい大和の風景写真に目を楽しませようと思って入った写真展。なのに1枚目の写真でショックで動けなくなってしまいました。それは「東大寺遠望」と題された1950年代の白黒写真。田圃の中に東大寺の瓦屋根。“ええっ、東大寺ってこんな何にもない場所にあったの!”あまりの風景の変わりように、信じられない思いでした。他にも、畑の先の法隆寺、東塔だけの薬師寺など、今は失われてしまった風景の数々。1950年代、建物も道路も自動車もなく、観光客もいない、ただ古寺だけがそこにあって、美しい。なんだか目の前の白黒写真が大和の風景の「遺影」のように見えてきて、悲しくなってきました。

古寺の写真といえば、まず「仏像」が思い浮かびます。でも、乱暴なことを言えば、仏像の写真はこれから先いつでも撮れる。10年後も50年後もそれほど変わらないお姿をとどめていてくれる。でも、風景はどうでしょう?1年後だって同じ写真が撮れるとは限りません。大和を写す本当の意義は、仏像よりも風景を記録することだと思いを改めました。もちろん、土門拳の鬼気迫る仏像写真の価値が下がるわけではないけれど、それだけに感動していた自分の至らなさを知りました。大和の風景写真という観点から、入江泰吉の写真を見直してみたいと思います。

現に、JR法隆寺駅から法隆寺までの田圃の中の道は、この10年の間にすっかり変わってしまいました。あの蛙の鳴くのんびりとしたあぜ道はいつの間にか失われてしまって、交通量の多い車道と代わり映えのしない郊外のニュータウンの風景に唖然としたのはつい去年のことです。

大仏殿遠望.JPG
大仏殿遠望(1955-1959年)
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