第100回大蔵会記念 仏法東漸ー仏教の典籍と美術ー [美術展]

仏法東漸.jpg
2015(平成27)年7月29日(水)~9月 6日(日)
京都国立博物館 平成知新館

仏教系の大学が持ち回りで研究会や典籍の展観を行う大蔵会。今年は100回記念「仏法東漸ー仏教の典籍と美術ー」として京都国立博物館で開催されました。典籍だけでなく、国宝絵画の「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」や「法然上人絵伝」の展示もありました。

意外にも興味深かったのは、禅僧の肖像画、頂相(ちんぞう)です。展示室に入ったときは、同じようなお坊さんの絵が並んでいて退屈だなぁ…と思ったのですが、ひとつひとつじっくり見ていくと、個性が描き分けられていて、まるで人柄まで写し取っているよう。画賛も多くが本人の自筆なので、字からも性格が想像されて絵から肉声が聞こえてきそうです。それに、頂相はただの肖像画ではなく、弟子が用意した師の頂相に師が字を書いてあげることで、弟子は師の法を正式に嗣いだことになるんですって。それぞれの頂相が個性的で真に迫っているのも頷けます。

自筆の書ということでは、偉大な2人の高僧、弘法大師 空海と伝教大師 最澄の書が隣の展示ケースに展示されていました。この2人の字があまりに対照的。自由奔放な空海に対して、几帳面な最澄。空海は上手に書こうなんて気は少しもなさそうなのに、達筆。反対に、最澄は丁寧過ぎてぎこちない。2人が最終的に絶縁したのは有名な話ですが、字をみて深く納得できました。

それに字だけでなく、そこに書かれた内容にも2人の関係性が現れていて、歴史の妙と因縁に嘆息。空海筆の「灌頂歴名」は、空海が行った密教の入門儀式の名簿。その名簿に書かれた名前の筆頭が最澄なんですね。そして最澄筆の「弘法大師請来目録」は、空海が唐からもってきた密教のお宝リストを最澄が書き写したもの。自分が持ち帰ることができなかった垂涎のリストを最澄は一体、どんな気持ちで書写したのでしょう。有り難くエキサイティングな気持ちと同時に、悔しさや嫉妬心は生じなかったのかな。その書に気持ちの乱れが感じられないだけに、なんだか居たたまれない…。2人のライバル対決、最澄を応援したくなりましたが、どうしても勝てる気がしません。こんな想像ができるのも、1200年前の文書が今日まで伝わっているからこそ。それこそがすごいことです。



タグ:国宝
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