田中一村展-千葉市美術館収蔵全作品(千葉市美術館) [美術展]

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田中一村展-千葉市美術館収蔵全作品
2021年1月5日(火)~2月28日(日)
千葉市美術館

「日本のアンリ・ルソー」と呼ばれる田中一村。実物を見るのは今回の展覧会が初めてです。大好きなルソーっぽい絵を写真でみたことがあって、とても楽しみにしていました。でもルソーとは全然違いました。亜熱帯の花鳥をモチーフにしたルソー似の絵は50歳で奄美大島に移住してからの作品。今回の展覧会は奄美に移るまで長く住んでいた千葉時代に描いたごく普通の日本画がほとんどです。でもがっかりするかと思いきや、全くそんなことはありませんでした。何気ない風景を描いたスケッチも圧倒的に上手くて、惹きつけられてやまない魅力があるのです。上手とは言えない(はっきり言って下手)なアンリ・ルソーになぞらえるのは、田中一村に対する誤解を生じさせますね。

その魅力は神童と呼ばれていた青年時代の作品からも感じられ、生まれながらの画家とはこういう人のことをいうのだろうなと感じ入り、これまで見てきたどんな画家よりも天賦の才を持っていると思えるほどです。東京美術学校日本画科に入学したのも当然のことでしょう。でも入学してすぐに退学してしまう。父の病気が理由らしいですが、才能があるからこそ学校教育から学ぶものはないと見切ってしまったのかもしれません。結局、その後、画壇では活動できず、一生貧しい生活に身を置くことになります。権力を持つものにとって才能のある若手は脅威ですから、そうであればあるほど上手く立ち回らないと生きてはいけないのでしょう。

そして東京美術学校の同期に東山魁夷がいたというのも運命の意地悪さを感じます。二人を大きく隔てたものは何だったのか、それは才能ではないことは確かです。画壇の中心で成功し大きな美術館で回顧展が開かれる東山魁夷に対して、デパート美術展が中心の田中一村、死んでも画壇がついてまわる…。田中一村を日本画家として再評価するためにも大きな美術館での回顧展を待ちたいと思います。

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速水御舟っぽい《椿図屏風》。こんな派手派手しい作品はほとんどなく、ささっと風景を描きつけた色紙大の小作が多かったです。そんな小画面でも一目で上手と分かるのがすごい。


ご近所の美味
千葉といえば落花生。展覧会に出品されていた田中一村の手紙にも奄美時代に千葉の友人から送ってきた落花生のお礼が書かれていました。
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