前の10件 | -

法隆寺西円堂の追儺会(鬼追い式) [寺・神社]

法隆寺西円堂で節分に行われる追儺会(鬼追い式)。その前の時間に行われる「薬師悔過」の法会から参加しました。お坊さんが声明を唱えて本尊の薬師如来さまを褒めたたえます。その声明は東大寺修二会と通じるものがありました。東大寺二月堂のご本尊は観音様なので「南無観(なむかん)」と繰り返しますが、西円堂のご本尊は薬師様なので「南無薬師(なむやー)」と繰り返します。残念なのは打ち鳴らす鈴の音。東大寺修二会の鈴の音はずっしりと神秘的で仏さまを召喚できるような幻想的な音色ですが、法隆寺の鈴はどこかまぬけで素っ頓狂…。そのせいか、法会の雰囲気もゆるりとしていました。

それでも目前に光背に千体仏を従えた2.5mもの大きな薬師如来坐像(国宝、奈良時代)がどーんといらっしゃり、それに対して「なむやー(あなたに帰依します)」と唱えるというのは祈りの実感と安心感があります。東大寺二月堂の観音様は絶対秘仏だから見ることができません。なんとも心もとないものなんだなぁと気付いてしまいました。逆に言えば、見えないものを信じるしかないからこそあんなに厳しく律してすべてを捧げないといけないのかもしれません。

法会が終わって追儺会の松明投げの時間になると地域の人が三々五々やってきます。子供たちがちっとも怖くない鬼に向かって「鬼さんこっち」と声を合わせて松明を要求しますが、なかなか松明が遠くに飛ばずに盛り上がりに欠けるのでした。東大寺のお松明と比べるとずいぶんのんびりしています。大きなお薬師様の鷹揚さがそうさせているのでしょう。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

よみがえる中世屏風ー京洛の祝祭、白砂青松の海ー(京都工芸繊維大学美術工芸資料館) [美術展]

中世屏風.jpg
よみがえる中世屏風ー京洛の祝祭、白砂青松の海ー
2024年1月6日(土)~2月9日(金)
京都工芸繊維大学美術工芸資料館

やまと絵屏風が大好きなので、きらびやかなやまと絵屛風のちらしをみてどうしても行きたくなって京都まで足を運びました。愛知県立芸術大学のプロジェクトで色鮮やかに復元された「月次祭礼図屏風模本」(東京国立博物館蔵)と「石山寺縁起絵巻」(石山寺蔵)の中に描かれた画中画「浜松図屏風」の2つの屏風のお披露目です。

金箔や雲母が波や雲となって画面いっぱいに広がり、キラキラと光を反射してそれはそれは美しい。現存する中世の屏風はどうしたって煤けていて、頭の中で想像復元して鑑賞していたけど、それ以上の美しさ。当時のきらめきを存分に味わうことができました。

想像していたよりも淡く優しいパステルカラーの色合いと透明感。屏風はインテリアだから女性好みなのかも。「石山寺縁起絵巻」の屏風の前にもやはり女性(藤原国能の妻)が描かれている!だから私もやまと絵屏風がこんなにも好きなんですね。



ご近所の美味

ひとうち.jpg


一乗寺・修学院のラーメン激戦区にある「らぁ麺 とうひち」。行列に並びました。美味しかったけど、関東と関西のラーメンはなんか違う…出汁?調味料?まだ食べ慣れない味です。


満月.JPG
阿闍梨餅の満月さん。本店・金閣寺店でしか買えない最中と満月。満月は土・日・祝のみ。ようやくいただくことができました。満月も面白い食感。阿闍梨餅とおなじようになんだか唯一無二のお菓子です。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

五浦に泊まる 温泉とあんこう「五浦観光ホテル別館 大観荘」 [温泉]

五浦には茨城県には数少ない温泉があり、しかも大観荘の温泉は源泉掛け流しです。露天風呂からは崖の上の松林と海が眺められ、横山大観の絵のような風景でした。ロビーには大観コーナーもあり、作品が展示されています。今回の旅はちょうど名物あんこうの季節の冬。あんこう尽くしのお食事を堪能しました。2024年の初贅沢。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

五浦を訪ねて [国内旅行]

岡倉天心がスキャンダルで東京を追われて向かったのが北茨城の五浦(いずら)、それに巻き込まれて横山大観や菱田春草らがこの地に暮らしています。なんで五浦?そもそもどこにあるの?なにがあるの?と疑問だらけ。いつか行きたいと思っていました。今回、ゆかりの場所を巡って自分なりにその答えを探します。

五浦の最寄り駅の大津港駅までは東京から普通列車で3時間(特急を使えば2時間)。天心が五浦に移ったのは1906年(明治39年)、常磐線は1897年(明治30年)に開設されているので、今より時間はかかったのかもしれませんが、東京にでるのもそれほど不便ではなかったのかもしれません。大津港駅の次の駅は福島県の勿来駅、有名な勿来(なこそ)の関があります。

私は勿来駅で降りて勿来の関公園から福島県と茨城県の県境を越え、五浦まで海沿いの道を5キロほど歩きました。漁港と集落、小さな神社、砂浜、太平洋…のどかなのんびりとした景色が続きます。遠くに高い崖がみえくると、そこだけ地形も植生も異なり、地図を確かめなくても五浦とわかりました。50メートルを超える断崖絶壁と鬱蒼とした松林…風光明媚といえないこともないのですが、人の出入りを拒むような威風を感じさせます。

天心が瞑想していたという六角堂は海の岩の上に建っており、すぐそこに大きな波が打ち寄せます。波の音を聞きながら、波頭が砕け、波がうちよせ、ひいていくのをみていると、どんどん無心になっていきます。天心はここでなにを考えていたのか…、海の向こうになにを見ていたのか…。

天心は五浦移住から7年後1913年(大正2年)に没しています。五浦に移ってからもボストンとの行き来が多く、五浦の滞在期間はそれほどではなかったようです。亡くなったのも新潟県赤倉温泉。それでも五浦といえば天心、天心ゆかりの場所や施設がそこかしこに今も継承されています。五浦は天心が神となりとどまり続けている場所のようです。

天心が死んだら植えてほしいと詩を残した水仙の花が五浦美術館に咲いていました。水仙は天心の故郷の越前水仙(福井県の県花)だそうです。


五浦遠景.jpg五浦近景.jpg
六角堂.jpg水仙.jpg


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

天心が託した国宝の未来(茨城県天心記念五浦美術館)、陶の仏-近代常滑の陶彫(高島屋史料館TOKYO) [美術展]

国宝の未来.jpg
天心が託した国宝の未来 -新納忠之介、仏像修理への道
2023年12月9日(土)~2024年2月12日(月・祝)
茨城県天心記念五浦美術館

陶の仏.jpg
陶の仏-近代常滑の陶彫
2023年9月16日(土)~2024年2月25日(日)
高島屋史料館TOKYO

仏像も大好きだし、明治になってからの近代日本美術の成立についてもよく知っているつもりだったけど、新納忠之介(にいろちゅうのすけ、1869~1954)のことも柴山清風(1901〜1969)のことも全く知りませんでした。もう20年ほど日本美術鑑賞を趣味としてきたけど、まだまだ未知との遭遇がある…、うれしくもあり、山の高さにうんざりもします。

新納忠之介は東京美術学校彫刻科を成績優秀で卒業。岡倉天心にみそめられたために、彫刻家ではなく文化財の修復に生涯をささげます。国宝や重要文化財の仏像修理を2000点以上手掛け、ボストン美術館の仏像修理にも赴いたとのこと。仏像の寸法帳や修理の記録ノートは見飽きません。私が拝してきた仏像の多くも新納の手によることが分かり、知られざる偉人に出会った展覧会でした。

一方の柴山清風は常滑陶器学校で陶器の彫刻を学んだ陶彫家。陶彫の仏像自体がマイナーですが、常滑という土地に生まれた清風にとって陶彫仏の制作は自然な流れだったのかもしれません。千体観音の無償配布を発願したり、各地で大型の陶彫仏を制作したそうです。熱海の伊豆山にも興亜観音像という巨大仏があるらしいですが、多くはすでに失われているとのこと。

新納の修復した仏像はこれから何百年も祈りの対象として引き継がれることが確約されているけれど、清風の仏像はいつまで「仏」でいられ続けるのか...。同じ彫刻家としてどちらがいいのでしょう。新納も自分のオリジナル作品を作りたかったのかな。そうだとしても、私は天心に導かれた(狂わされた)新納の仕事に惹かれます。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展(国立西洋美術館) [美術展]

キュビズム展.jpg
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展
ー美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ

2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)
国立西洋美術館

大好きなシャガールが5点も来ていました。せいぜい2点ぐらいかなと思っていたのでうれしさひとしお。あまりの太っ腹にパリのポンピドゥーはどうなっているのかと心配したら、なんと同時期に「仕事するシャガール」という回顧展をしています。2022年にマルク・シャガールの素描127点、陶磁器5点、彫刻7点がコレクションに新たに加わったお披露目らしい。さすが、ポンピドゥー・センター。

いつか新コレクション見てみたいけど、パリは遠いなぁ...なんて思いながら調べていたら、ポンピドゥー・センター、改修工事で2025年末から30年まで休館になってしまうそうです。当初2023年から始まるはずだった工事がパリオリンピック期間中にも開館できるように延期になったそう。来年までに行かないとしばらくはおあずけです。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

繡と織 華麗なる日本染織の世界(根津美術館) [美術展]

繡と織.jpg
繡と織 華麗なる日本染織の世界
2023年12月16日(土)~2024年1月28日(日)
根津美術館

2024年、コロナ禍も過ぎて久しぶりの迎春と思っていたら、年明けから地震と飛行機事故…。私自身も久しぶりに風邪で発熱し、大掃除もせず、おせちも食べず、ひたすら寝て過ごした年末年始でした。浮かれ気分はなく、静かでほの暗い年始です。
それでも1月の美術館は華やかでおめでたい品々で満たされています。今年がよい年となるように祈りを込めて選ばれた作品たち。吉祥文様の装束にうっとりして、少しだけお正月気分を味わいました。


ご近所の美味
天ぷら みや川.jpg
前から気になっていた根津美術館の向かいにある「天ぷら みや川」。とてもリーズナブルに美味しい天ぷらをいただきました。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

特別展 木島櫻谷 ー山水夢中(泉屋博古館東京) [美術展]

木島櫻谷.jpg
特別展 木島櫻谷 ー山水夢中
2023年6月3日(土)~7月23日(日)
泉屋博古館東京

泉屋博古館(せんおくはっこかん)の木島櫻谷(このしまおうこく)展は2014年と2018年にも開催されています(2014年の記事)。その時にみた屏風絵「寒月」は忘れられない1枚。竹林の狐に誘われて絵の中に引き込まれるようでした。そんなこともあって、櫻谷といえば動物画のイメージでしたが、今回は山水画や風景画が多く展示されています。動物画や人物画より断然よくて、櫻谷の絵の上手さが際立ちます。

特に耶馬渓を描いた大作「万壑烟霧」は圧巻でした。急峻な崖、もやもやとした空気感、一本一本の木々を墨の一色だけでパノラミックに描き分け、壮大な景色に圧倒されます。渾身の素晴らしい作品。「富⼠⼭図屏⾵」も高貴で険しい富士山の雄姿を写していて、横山大観なんて比べ物にならないほど上手。それでも“俺ってすごいでしょ”といった押しつけがましさを感じさせないのが京都人だなぁと思いました。

大観とは因縁のある櫻谷です。そのために画家としては不運だったといわれているけど、そんなこともないような気がします。京都人の櫻谷にとって東京で(田舎者に)認められることなんてどうでもいいことだったのではないでしょうか。京都のコミュニティーで好きな絵を描き続けることができればよかったのではないかと思います。そんな京都人の余裕と矜持を感じました。


富⼠⼭3.jpg


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

蔡國強 宇宙遊 ー<原初火球>から始まる(国立新美術館) [美術展]

蔡國強 宇宙遊.jpg
蔡國強 宇宙遊 ー<原初火球>から始まる
2023年6月29日(木)~8月21日(月)
国立新美術館

蔡國強(さいこっきょう)は2015年の横浜美術館の展覧会が初見でした(そのときの記事)。作品だけでなくその言葉に強く惹かれたのを覚えています。今回の展覧会もご本人が書いた解説文(わりと長文)が強い支柱となっています。

大きな展示空間の壁際に1980年代の初期作品から順を追って今に至る火薬を使った一連の作品や映像が並んでいます。作品だけでは何を表現したいのかさっぱりわかりませんが、解説文を読むとその背景をうかがい知ることができます。その思考は宇宙まで射程に入った壮大さで簡単には近づけません。ただ、とても人間味のある難解さなのです。だから分からながらフレンドリーに楽しめます。

外見もアーティストというよりは地に足の着いた商売人みたい。魚屋や酒屋の前掛けや鉢巻が似合いそうです。とてつもなく魅力的な人なんだろうなと思います。福島県いわきの人たちとの長年にわたるつながりも心を打ちます。「満天の桜が咲く日」の花火には映像でも度肝を抜かれました。けた違いな規模と美しさ、桜だけでなく津波もイメージさせられます。それを見つめるいわきの人達の笑顔。「火薬」という人を傷つけるために使われる道具も蔡國強の手にかかれば無念の魂を鎮めることができるのです。





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

豊乗寺の普賢菩薩像(東京国立博物館 国宝室) [仏像・仏画]

豊乗寺 普賢菩薩像
2023年6月6日(火)~7月2日(日)
東京国立博物館 国宝室

東博に寄託されている豊乗寺(ぶじょうじ)の普賢菩薩像(国宝 平安時代)が国宝室で久しぶりに展示されました。鳥取県智頭町(ちずちょう)の豊乗寺に行ったのは2022年GW。鳥取旅行中にふと豊乗寺が鳥取にあることを思い出して訪ねてみたのでした。豊乗寺は空海の実弟・真雅による開基と伝えられる密教寺院。国宝の普賢菩薩像のほかにも多くの文化財を伝えていますが、今では訪れる人も少ないようです。真言宗だからでしょうか、境内の真ん中に高野槙の巨木がそびえていました。そんな風景を思い出しながら鑑賞しました。

截金は手を尽くした繊細さだけれど、菩薩のお姿や白い象の体格はわりとどっしりとしています。お顔もしっかりと頬が張っていて男性的。普賢菩薩というと女性好みの痩せた優しいお姿と美しいお顔がイメージされますが、豊乗寺の普賢像は違っています。都と地方の違いなのか、それとも時代なのか、どちらにしても贅を尽くして作られた素晴らしい仏画でした。

それにしても東博もすっかりコロナ前に戻って外国人含めて人が多く、閉館時間になっても展示室は混みあっていました。日の長い夏の間は夜間開館を再開していただきたいです。そして空調が弱くて蒸し暑かった…もう少し適温にしていただきたいです。なんだかリクエストばかりになってしまいました。


コウヤマキ.jpg
「豊乗寺 高野槙」


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート
前の10件 | -