中世宇都宮氏-頼朝・尊氏・秀吉を支えた名族-(栃木県立博物館) [美術展]

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開館35周年記念特別企画展「中世宇都宮氏-頼朝・尊氏・秀吉を支えた名族-」
2017年9月16日(土)~10月30日(月)
栃木県立博物館

宇都宮氏にはなんの思い入れもなかったけれど、だからこそ驚きや気づきがたくさんありました。仏像や鎌倉仏教の知識が宇都宮氏と結びついて、“へぇ、そうだったの!”と好奇心が満たされる喜びを味わいつつ、これほどメモった展覧会はありません。メモの中からここに書き留めておきます。

・宇都宮氏と東大寺再興
三代宇都宮朝綱は1194年に源頼朝から南都焼き討ちで焼失した東大寺再興の助成を拝命し、大仏の左脇侍 観音菩薩像の改修を受け持ったそう。観音菩薩の制作担当仏師はなんと快慶と定覚!のっけから宇都宮氏に親近感です。この後、五代頼綱と七代景綱はこの観音に供する灯油料として水田を寄進していて、東大寺文書からこの寄進状が大仏殿の西壁に掲示されていたことが知られるんですって。今は失われてしまった慶派仏師の四天王や脇侍がずらりと並んだ当時のようすをリアルに妄想してしまいました。

・地蔵院(栃木県益子町)快慶風の菩薩像
地蔵院の前身は三代朝綱が開山した尾羽寺と伝えられます。快慶風の観音菩薩像と至勢菩薩像は東大寺再興のご縁で朝綱が快慶に依頼したとも考えられているお像だそう。う~ん、ちょっと快慶作とは違うような気がしますが、端正な美男子です。

・宇都宮氏と法然
藤原定家の選んだ百人一首が宇都宮氏から依頼されたことは知っていましたが、それが五代頼綱なんですね。歌人としても有名な頼綱は謀反の嫌疑を受けて出家し、蓮生(れんしょう)と号して法然の弟子になったそうです。法然の死後、上人の遺骸を運ぶ際には蓮生など関東御家人の念仏者が警備にあたそうで、ちらしにも使われている「法然上人絵伝 巻四二」(知恩院蔵、国宝)の一場面は、馬に乗った蓮生(頼綱)を先頭に法然の遺骸を運んでいるところ。「法然上人行状絵巻 巻二六」(當麻寺奥院、重文)には蓮生が往生をとげる場面が描かれています。そんな重要人物が宇都宮氏にいたとは、恥ずかしながら全く知りませんでした…。

・岩谷寺(茨城県笠間市)の薬師如来立像に再会
4月に笠間三観音を巡りました(そのときの記事)。その際、このお薬師さまにもお会いし、造立主の笠間時朝の名前と笠間氏が宇都宮氏の一族であることを知りました。笠間時朝は宇都宮氏五代頼綱(蓮生)の甥っ子です。この時に宇都宮氏にはかなり接近していたのですね。こんなに時をおかずしてお薬師さまに再会するとは思ってもいませんでしたが、遠からずこうやって宇都宮氏と知り合う運命だったのかも。時朝は京都蓮華王院(三十三間堂)に千手観音を寄進していたりして、信仰心の厚い人物だったよう。宇都宮氏の中では私の一押しです。


それにしてもよく全国からこれだけの資料を集めたものです。文書だけでなく仏像や絵巻まで、宇都宮氏ゆかりの国宝・重文が約70点、宇都宮でしか実現できない展覧会です。遠路、足を運んだかいがありました。一方で公式HPの情報が薄めだったり、講演会の申し込みが電話でしかできなかったりした点はちょっともったいない感じがしました。


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日帰り宇都宮旅行 [寺・神社]

日帰りで宇都宮へ。初訪です。栃木県立博物館の「中世宇都宮氏」展を見に行きました。駅前でレンタサイクルを借りて(100円)、まずは市内観光。

清巌寺(せいがんじ)
駅からほど近い浄土宗の寺院。宇都宮家8代城主の貞綱が1312年に亡母の十三回忌の供養に建立させた鉄塔婆(重要文化財)があります。本来は屋外にあったのでしょうが、今は出入り自由の収蔵庫に高さ3m以上もある鉄塔婆がぽつんと収まっています。境内にはだれもおらず、収蔵庫の開け閉めや電気もセルフサービスです。

清巌寺 鉄塔婆.jpg


二荒山神社(ふたらやまじんじゃ)
こちらはお宮参りの参拝客でにぎわっていました。ここには重要美術品に指定された鉄製の狛犬と兜があります。調べてみると、栃木の鋳物は平安時代からの古い歴史があって、藤原秀郷が河内の国から5人の鋳物師を佐野に移り住まわせて武具を制作させたのがその始まりだそう。現代でも天明鋳物(てんみょういもの)として続いているそうです。

一向寺(いっこうじ)
一向寺の阿弥陀如来坐像も木造ではなく、本体は銅造、蓮華座は鉄製の鋳造です(室町時代、重要文化財)。仏さまの衣には文字がびっしりと刻まれていて、宇都宮家12代城主の満綱が願主となって、約350人が血縁して造立したことがわかるそうです。一見、普通の阿弥陀様にみえますが、350人もの戒名が書かれた体躯はなかなかヘビー。ここも収蔵庫が開いていて、出入り自由でした。

一向寺 阿弥陀如来坐像.jpg


今回、巡った3社寺すべてに鉄や銅製の文化財が伝わっていました、栃木といえば大谷石で有名なので石の文化なのかと思っていましたが、大谷石の採掘が本格的に始められたのは江戸時代の中頃だそう。「鋳物」の歴史の方がずっと長いのですね。

タグ:仏像
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ほとけを支える-蓮華・霊獣・天部・邪鬼-(根津美術館) [美術展]

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企画展 ほとけを支える-蓮華・霊獣・天部・邪鬼-
2017年9月14日(木)~10月22日(日)
根津美術館

とっつきにくかった曼荼羅とお近づきになれたのが根津美術館の曼荼羅展(そのときの記事)。目にも鮮やかな「金剛界八十一尊曼荼羅」(重要文化財)に再会しました。今回はほとけさまが座っていらっしゃる台座にスポットがあてられ、大きなパネルを使って詳しく解説されています。中央の大日如来は七頭の「獅子」が支える蓮華座に座っていらっしゃり、周囲の四尊の台座は阿閦如来は「象」、宝生如来は「馬」、阿弥陀如来は「孔雀」、不空成就如来は「迦楼羅」すべて動物なんですね。ふつうなら見落としてしまうような小さな一尊の台座にさえちゃんとルールがあって、描き分けられているなんて!恐るべき曼荼羅世界。みれば見るほどはまって、その前から動けなくなってしまいます。この「金剛界八十一尊曼荼羅」は滋賀の湖東三山のひとつ、金剛輪寺の灌頂堂に伝わったものだそう。最近復元され、お寺で特別公開されているようなので、ぜひ行ってみたいなぁ。

「金剛界八十一尊曼荼羅」(重要文化財)

かっこよさでは「降三世明王・大威徳明王」(重要美術品)の台座がダントツ。降三世明王を支えるシヴァの夫婦は“誰のおかげで立っていられると思ってるんだ!”って感じで、踏みつけられながらも誇り高い表情。大威徳明王の乗っている水牛はめずらしく憤怒の表情で口を大きく開けて怒っています。どちらもものすごく生き生きと明王を支えていて目を引きました。

五大尊像「降三世明王」  五大尊像「大威徳明王」

美しかったのは中尊寺の仏像の胎内に納められていた「大日如来坐像」(重要文化財)。平安時代の仏画とは思えないほど保存状態がよく、台座も華麗に彩られています。

「大日如来坐像」(重要文化財)


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ボストン美術館の至宝展(東京都美術館) [美術展]

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ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション
2017年7月20日(木)~10月9日(月・祝)
東京都美術館

先週、千葉市美術館でボストン美術館所蔵の「鈴木春信展」に行ったので、2週連続でボストン美術館の展覧会です。東洋美術の優品を多数所蔵しているボストン美術館だから、徽宗、曽我蕭白からモネ、オキーフにいたるまでなんでもあり、頭がクラクラしてきました。

でもやっぱり心惹かれるのは日本美術です。特にこれまであまり見ることのなかった英一蝶、都会的で洗練されていてめちゃくちゃ上手でした。巨大な「涅槃図」の表情豊かな人物や動物はもちろんのこと「月次風俗図屏風」の躍動感もすごい。でもなぜか裸眼では分かりにくく(というか全く気が付かず)、単眼鏡で拡大するとまるで受ける印象が違って何倍も良く見えるのです。なんででしょうか。不思議です。

この「涅槃図」はもとは青松寺(港区愛宕)の塔頭吟窓院に寄進されたものをフェノロサがボストンに持ち込んだそう。もしそのまま青松寺にあったとしたら、関東大震災や空襲で消失してしまっただろうから、こうやって拝することもなかったかもしれません。美術品の海外流出も考えようによっては作品の保護につながっているんですね。

その他に、地味だけどかわいい野々村仁清「銹絵鳰型香合」やほのぼのと楽しそうな与謝蕪村の「柳堤渡水・丘辺行楽図屏風」などが印象に残っています。



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ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信(千葉市美術館) [美術展]

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ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信
2017年9月6日(水)~10月23日(月)
千葉市美術館

ボストン美術館から100点もの春信作品が日本に里帰り。鈴木春信は一番好きな浮世絵師なので至福の展覧会でした。錦絵の誕生のきっかけとなった「絵暦(えごよみ)」から始まり、古典や歌人から題材をとった「見立て絵」、日常のなんてことのない一場面を描いた風俗画までテーマはさまざま。でも初期から晩年までパステルカラーで彩られた中性的な人物描写は変わらず、ぶれない春信です。当時、全盛だった役者絵を描かなかったというのも、なにか信念があったのでしょうね。

そして、なにより「猫」を描いた作品が5点もあって嬉しくなってしまいました。炬燵(こたつ)の上でくつろいでいたり、紐にじゃれついていたり、ねこメインではないけれど、ねこ好きにしか描けない一場面です。猫を擬人化した歌川国芳もいいけれど、自然な姿の春信のネコも好ましく、ますます春信のお株があがってしまいました。

春信作品は8割以上が海外にあるそうで、日本ではなかなか一度にたくさんの作品をまとめてみる機会がありません。今回ほぼすべてが初見の作品でしたが、どの1枚をとってみても春信ワールド全開で期待を裏切るものがひとつもありませんでした。春信ファンの私にとっては今年のベスト3に入る展覧会。作品の保存状態も素晴らしく、春信ならではの中間色をそのままに残してきたボストン美術館に感謝です。


炬燵で向き合う男女 鈴木春信.jpg
「水仙花」炬燵で向き合う男女 鈴木春信
若衆の足の裏をくすぐる娘…薄目を開けてるネコ


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八ッ橋の男女(見立八橋) 鈴木春信
伊勢物語の恋の聖地のふたり。右足の靴ひもがほどけるのは両想いがかなう前兆。


見立玉虫 屋島の合戦 鈴木春信.jpg
見立玉虫 屋島の合戦 鈴木春信
右側には恋文を結んだ弓を持つ若衆。娘の心を射止められるか?
(ボストン美術館にしかない1枚)



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東京国立博物館の総合文化展(2017年9月) [美術展]

東京国立博物館の総合文化展(2017年9月)で撮影した写真です。

運慶の後継者たち―康円と善派を中心に
2017年8月29日(火)~12月3日(日)
特別展「運慶」の関連展示。

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文殊菩薩坐像 康円作(重要文化財 興福寺伝来 鎌倉時代)
きりりと賢そうな文殊様。頭上の3体のほとけさまがかわいい。康円は運慶の孫と伝えるそうです。

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愛染明王坐像 康円作(重要文化財 神護寺蔵 鎌倉時代)
康円って真面目な人だったのかも。迫力はあるけど、あそびが少ないような気がします。世田谷観音寺の不動・八大童子像が康円作だそうなので、見に行きたい(毎月28日開扉)。


国宝 一遍聖絵 巻第七
2017年8月29日(火)~9月24日(日)

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カッコよくて大人気の一遍上人。ロックスターのライブみたいです。


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トリップ感のトリップってもともとは旅行のトリップからきているんだそうです。旅に生きた一遍上人とそのメンバーたち、文字通りトリップしてます。


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店先に犬が集まっています。美味しいものでも売っているお店なのかしら。真ん中にいる丸っこいのはネコ?


総合文化展

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遊行上人縁起絵巻 乙巻(重要文化財 鎌倉時代)
同じ一遍上人の踊念仏を描いた場面でも、こちらはグルーブ感が全くでていません。これをみると国宝「一遍聖絵」(↑)がいかに素晴らしいかが分かりますね。


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獅子螺鈿鞍(ししらでんくら)(重要文化財 平安~鎌倉時代)
動物モチーフはついつい写真を撮ってしまいます。やけに立派な獅子の歯。獅子舞の歯みたい。


老子出関図  岩佐又兵衛筆.jpg
老子出関図(岩佐又兵衛)
これ「旧金谷屏風」(六曲一双12図)の1図でなんですって。そうとは知らずに撮影。動物モチーフだったので。


伊勢物語 鳥の子図 岩佐又兵衛筆.jpg
伊勢物語 鳥の子図(岩佐又兵衛)
これも「旧金谷屏風」(六曲一双12図)の1図とは知らなかった…。伊勢物語の第50段にある和歌「ゆく水に数かくよりもはかなきは思はぬ人をおもふなりけり(流れていく水に数字を書くよりもはかないのは、思ってくれない人を思うことです)」が描かれています。袖下からぬっと出ている左手が不気味。


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館蔵 秋の優品展 大般若経と禅宗(五島美術館) [美術展]

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館蔵 秋の優品展 大般若経と禅宗
2017年8月26日(土)〜10月15日(日)
五島美術館

文字ばかりの本より漫画の方が親しみやすいのと同じように、経典や墨蹟より絵画(図像)の方が楽しいです。現代の本なら読むことができるけれど、古文書は読むことも意味をとることも難しい。お経といえども読めなければありがたみも半減です。その点、絵は分かりやすい。古写経の展覧会ですが、数少ない仏画に目が行ってしまいました。

というのも「玄証本」のグロテスクでかっこいい白描四天王図像に一目惚れ。玄証は数多くの白描図像を収集・書写した平安時代末期から鎌倉時代の絵仏師だそう。この玄証さん、現代に生まれていたら大人気の少年漫画家になっていたと思います。黒の線描だから漫画っぽいし、チャーミングな袖口の象や邪鬼なんて仏画の枠を越えています。

玄証本の白描図は高山寺月上院に伝えられてきたので「高野山」の印が押されているそうです(そういえばこの印、見覚えがある)。「玄証」の署名でその名が知られていますが、「玄証本」とされていても玄証の自筆本を模写したものも含まれているんですって。五島美術館所蔵の3点は玄証の自筆本とみなされているみたいですが、それにしてもこの時代に自分の名前を図中に記すってなかなかないことです。

玄証の活躍した鎌倉時代前期は仏師の運慶や快慶とも重なっていて、それぞれ自分の生み出した新しい時代の仏像や仏画に思い入れや自負があったのかもしれません。その後、運慶や快慶が彫刻した仏像でなくてもその作として伝わったのと同じように、仏画でも玄証の名前を付した作品が珍重されたのでしょう。リアルでカッコいい慶派仏師の仏像とも通じる玄証の仏画。いつか「玄証展」なんてあるといいなぁ。


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白描四天王図像 玄証本(重要文化財 )


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特別展 月岡芳年 妖怪百物語 月百姿(太田記念美術館) [美術展]

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特別展 月岡芳年 妖怪百物語
2017年7月29日(土)~8月27日(日)
特別展 月岡芳年 月百姿
2017年9月1日(金)~9月24日(日)
太田記念美術館

芳年のシリーズ物「和漢百物語」「新形三十六怪撰」「月百姿」が全点公開。1枚だけでも強烈な印象を受けるのに(そのときの記事1記事2)、200点もの芳年シャワーをあびたらどんなことになるのでしょう。それも風景画や役者絵は1枚もなく、妖怪や幽霊、怪奇現象、この世に心を残して亡くなった人物など現実ではないスピリチュアルな世界ばかり。”あー、だからこそ私は芳年に惹かれてきたんだなぁ”と納得しました。

1枚だと不思議な怖さを感じさせる芳年もここまで並んでいるとリミッターがはずれ、心を乱すこともなくかえって冷静に鑑賞。描かれている妖怪や人物が芳年オリジナルではなく「伊勢物語」や「源氏物語」などからの引用なのだと気が付きました。それって明治時代の庶民は古典のエピソードを常識として普通に知っていたってことです。それなのに私は解説文を読まないと何が描かれているのかわからない…。原典を知っていたらもっと芳年の世界を楽しめるのに…。今になって学生のときに勉強しておけばよかったと思うのですが、若いときは別のことが楽しいんですよね。

逆に美術鑑賞をするようになって、古典を学ぶことが多いです。例えば「平家物語」の大物浦(だいもつのうら)。前田青邨の「知盛幻生」でそのエピソードを知りました(そのときの記事)。芳年の「月百姿」にも「大物浦上月 弁慶」があります。大波に飲まれる寸前の弁慶の達観したような姿が美しい。こうやって1点1点が繋がっていくのが美術鑑賞の醍醐味かもしれません。


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「つきの百姿 大物海上月 弁慶」 月岡芳年



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かくれ里の火祭り「広河原の松上げ」(京都) [寺・神社]

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広河原の松上げ(京都市左京区広河原)
2017年8月24日

京都の山間でお盆の時期に行われる火祭り「松上げ」。白洲正子氏の「かくれ里」で読んで以来、いつか行ってみたいと思っていました。京都市北部のいくつかの土地で伝承されているそうですが、どこもかくれ里だけあって路線バスでの日帰りはできません。今回は京都バスの鑑賞ツアーで広河原という場所の松上げに行きました。

京都市中心部からバスで2時間ほど、街灯もない山道でバス一台がやっと通れるような狭い道が続きます。いくつかの峠を越えると、川沿いの平地にでました。真っ暗だから、どんな場所なのかさっぱり分かりませんが、バスを降りて会場へ。

四方を山に囲まれた狭い空には満天の星が瞬いて、別天地に来たような気分です。天の川は見えているのに、目の前にあると思われる川は暗くてわからず、河原には「地松」と呼ばれる背丈ほどの燈籠台が何百本、いや千本以上も立てられています。すべての松明に火をつけ終わるのに30分ほどもかかったのではないでしょうか。いよいよ「松上げ」が始まります。運動会の玉入れのように、籠の部分に松明をくるくると回しながら投げ入れ、いくつかの玉が命中すると籠中の薪が大きな炎を上げて燃えだします。思わず拍手。なんだか一体感。大きく燃えた籠は最後には地面に倒され、男衆が力を合わせて川の中へ。残り火がしんみりとした気持ちにさせます。火祭りっぽく荒々しいところもありますが、幽玄さの方が勝る、いかにも京都の火祭りでした。

それにしても広河原という里山はどんなところなのでしょう。街灯もない夜のことでしたので、まったく様子が知られません。うねうねとした山道を帰りながら、本当に存在する場所なのか確証が持てないまま、23時過ぎに京都洛中に戻ってきました。


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すごくフォトジェニックなお祭りなので、カメラマンがたくさんいました。
私もたくさん写真をとりましたが、テクニックがないとなかなか上手く撮れませんね。



かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

かくれ里 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

  • 作者: 白洲 正子
  • 出版社: 講談社
  • 発売日: 1991/04/03
  • メディア: 文庫



タグ:神事
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特別公開 東大寺大仏縁起絵巻(東大寺ミュージアム) [寺・神社]

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特別公開 東大寺大仏縁起絵巻(東大寺ミュージアム)
2017年8月1日(火)~9月30日(土)
東大寺ミュージアム

東大寺大仏縁起絵巻は、室町時代後期に東大寺の祐全(ゆうぜん)が勧進僧となり、興福寺絵所芝座の絵師 琳賢(りんけん)が画を描き、詞書は上巻が後奈良天皇、中巻が青蓮院宮尊鎮法親王、下巻が西室公順によって書写されたそうです。保存修理後の特別公開で中巻をみました。どうも人の顔がバタ臭くて悪人ぽいんですよね…。大仏造立にあたって奥州から金が献上された場面も“しめしめ”って感じです。お寺の縁起絵巻には似つかわしくない絵柄だなぁ。でも、ピンクとレモンイエローの雲の色がとってもきれいでした。大仏を鋳造する鋳物師が25人なのは二十五菩薩に由来するんですって。二十五菩薩には今しがた、奈良博の源信展でお会いしたばかり。鋳物師に親近感です。


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東大寺大仏縁起絵巻(中巻)


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