「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」展(京都国立博物館):その他編 [美術展]

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開館120周年記念 特別展覧会 国宝
2017年10月3日(火)~11月26日(日)
京都国立博物館 平成知新館

仏画以外では絵巻と屏風絵に見入ってしまいます。反対に山水画や中国絵画、工芸品にはあまり興味がなく、レアものの曜変天目(京都・龍光院)も素通りしちゃったし、雪舟尽くしの展示室も思ったほど感じ入りませんでした。2014年の東博の「日本国宝展」でも同じ傾向だったので、人の好みってそんなに変わらないのでしょうね(成長していなだけか)。あと東京ではおなじみの「雪松図屏風」(三井記念美術館)や「燕子花図屏風」(根津美術館)が鳴り物入りだったりして、地域差も感じました。

・信貴山縁起絵巻(奈良・朝護孫子寺)
大好きな尼公ばあさんと再会(そのときの記事)。なんともほっこりするな~。こんなおばあちゃんになりたい。今回、尼公が弟の行方を尋ねて寄った家の奥にネコを発見。棚の上でお昼寝中です。日本最古の「絵に描かれた猫」だそう。家の外にはわんこもいました。

・華厳五十五所絵巻(奈良・東大寺)
善財童子がかわいくて萌えました。善財ちゃんは男子の設定だけど、どうみても小学生女子にしかみえません。文殊菩薩の勧めに従って55人の聖人を次々と訪ね歩く善財ちゃん、弱音もはかず、愚痴も言わず、素直でけなげ。感情移入して応援しちゃいます。最後、悟りを得られてホッとしました。まるで母親の気持ちです。

・花鳥図襖 狩野永徳筆(京都・聚光院)
さえずりが聞こえてきそうな鳥のかわいさはおじいさん譲りですね。狩野元信(永徳の祖父)の展覧会をみたばかりだったので、2人の共通点がよくわかりました。

花鳥図屏風 聚光院.jpg


・金剛経 張即之筆 蘭渓道隆筆
蘭渓道隆が影響を受けた書家が南宋の張即之(ちょうそくし、1186~1266年)なんですって。2人の金剛経が並んで展示されていましたが、オリジナルの張即之より真似した蘭渓道隆の字の方が上手で繊細にみえます。蘭渓道隆はその頂相(似顔絵)や墨蹟(自筆)から器用な秀才のイメージなので、やっぱりなぁ、とうなずけました。

・伝平重盛像・伝源頼朝像・伝藤原光能像(京都・神護寺)
この教科書で有名な肖像画、でっかいですね。その大きさに圧倒されてしまいました。神護寺の虫払でみているはずですが、こんなに大きかったっけなぁ。等身大以上です。ここまで大きく描くのには、なにか重要な意味があるのでしょうね。本当はだれを描いているのか、興味がつきません。

・帰牧図 李迪筆(奈良・大和文華館)
中国絵画から1点入選。「雪景色」と「牛」という大好きなモチーフが重なっていて、有無を言わせず「お気に入り」に登録です。

雪中帰牛図 左幅.jpg

雪中帰牛図 右幅.jpg


・兜跋毘沙門天立像(京都・教王護国寺)
東寺の宝物館で何度もお会いしている毘沙門天ですが、お出かけ先の展示室では全く違ってみえます。いつもの5割増しでかっこよかったです。


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「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」展(京都国立博物館):仏画編 [美術展]

国宝展 京博.jpg
開館120周年記念 特別展覧会 国宝
2017年10月3日(火)~11月26日(日)
京都国立博物館 平成知新館

お気に入りとの再会と新しい出会いを楽しみにⅡ期とⅣ期の2回足を運びました。お祭りみたいなものだから混雑は想定内。これだけランダムに名品が並ぶと自分の好みがよーくわかります。やっぱり仏画の前で足がとまりました。

・釈迦金棺出現図(京都国立博物館)
涅槃に入られたお釈迦様がイエスキリストのようによみがえった場面を描いています。涅槃図といえばお釈迦様は横たわっているのでとても珍しい構図。周りに集まっている衆生もこころなしかビックリしているように見えました。その人物の何人かに小さく名前が書きこまれているのを単眼鏡で見つけて急に親近感。“〇〇さん、よかったね!”と一緒に喜びたくなりました。名前って大事ですね。

釈迦金棺出現図.jpg


釈迦如来像(赤釈迦)(京都・神護寺)
いならぶ仏画の中でも神秘度が極まっていて、博物館の中にも関わらず抑えようもない霊力を発散していました。すべて見透かすようなまなざしで、男性にも女性にもみえる高貴なお顔。近寄りがたく畏れ多く、美しいけれど美術品とはなりえない生きている仏画です。切れ長の目をよくよくみると黒目には赤い縁取り、白目の目尻には青が入っています。赤い衣に施された截金もめちゃくちゃ手が込んでいます。

千手観音像(東京国立博物館)
千手観音は多くの手をどう処理するかが難しいので、仏像も仏画もあまりグッときません。でもこの千手観音は多手を破綻なくまとめて、違和感がありません。東博の所蔵なのに今までその存在を知りませんでした。嬉しい出会いです。

・両界曼荼羅図(京都・教王護国寺)
東寺の暗くて狭い宝物館でみるのとは全く違ってみえました。華々しいステージでパワー全開、きらきらして鮮やかで圧倒されます。これが9世紀の作なんて信じられません。当時これだけのものを造る技術があったという事実に、そして21世紀の現代まで1200年もその威力を失わずに伝えられてきた事実に、ただただひれ伏すしかありません。解説によると中国製という説もあるそうです。そうかもしれないな、と腑に落ちました。

十二天像(京都国立博物館)
この京博の十二天像はあまり良さがわかりません(以前の記事)。平安時代後期の1127年に描かれ、東寺(教王護国寺)での儀式に使われていました。当時の貴族好みの濃厚な耽美主義的作風といわれていて、贅は尽しているけれど、退廃的で気持ちが悪いのです。この十二天像をみると、この後、貴族社会が崩壊していくのも予感できるような気がします。世紀末的というか末法の世というか、ひとつの時代が終わっていくのを象徴しているような仏画です。

孔雀明王像(東京国立博物館)、十一面観音像(奈良国立博物館)
今回、出品された仏画13点のうち、国立博物館の所蔵するものが7点。明治の廃仏毀釈でお寺から放出され、国立博物館の所蔵となっている仏像や仏画は少なくありません。この2点の解説文にはその来歴が記されていました。孔雀明王像は「高野山→井上馨→原三渓→東博」、十一面観音像は「法起寺→井上馨→益田鈍翁→奈良博」と次々と所蔵者が変わっています。なんだか複雑な気持ちになりますね。お金で売買するようなものではないと思うけど、お寺を救ったのも事実だからなぁ。


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天下を治めた絵師 狩野元信(サントリー美術館) [美術展]

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六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信
2017年9月16日(土)~11月5日(日)
サントリー美術館

二代目って徳川将軍家にしても、二代目社長や二世タレントにしても、あまりぱっとしないイメージです。狩野派も同じで二代目が元信であることも、その元信の代表作も思い浮かびませんでした。今回の展覧会ちらしのメインビジュアルに京都国立博物館の「禅ー心をかたちにー」展でお気に入りに登録した大仙院方丈障壁画の「四季花鳥図」が使われていて(そのときの記事)、“あー、あの襖絵を描いたのが二代目元信だったのね”と認識しました。

「四季花鳥図」(京都・大仙院)は俯瞰してみると堂々として荘厳なんだけど、近寄ってフォーカスすると鳥のかわいさがたまりません。大寺院の障壁画なのにほのぼのしちゃう。ちゃんと鳥の視線が行き交っていて、見つめ合ったりさえずり合ったり、まるで女子高生みたいに楽しそうです。「花鳥図屏風」(栃木県立博物館)の鳥も水浴びをしたり、花の蜜を食べていたり、うとうとと寝ていたり、いろんなポージングで癒されました。同じ鳥でも決して視線を交わさない他人行儀の伊藤若冲の鳥とは真逆。性格が絵にもでているんでしょうね。私の中の元信は好奇心旺盛でチームワークを大事にするコミュニケーション上手な二代目のイメージとなりました。

意外なところでは、一昨年、山梨県立博物館でお気に入りに登録した「富士曼荼羅図」(静岡・富士山本宮浅間大社)(そのときの記事)。“これも元信だったのか~”と嬉しい再会でした(実際は「元信印」なので真筆かは分からない)。名前を意識していなかったから気づけなかっただけで、実はかなりの元信好きなのかも。展示解説によると、元信は狩野派の漢画に土佐派のやまと絵を取り込んだそうですが、私が好きな元信は新しく取り入れたやまと絵の部分らしいです。漢画がオリジナルの山水図や仏画にはまったく反応しませんでした。ともあれ、二代目元信、しっかりと頭に刻み込みます。


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「四季花鳥図」(京都・大仙院)


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「富士曼荼羅図」(静岡・富士山本宮浅間大社)


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シャガール 三次元の世界(東京ステーションギャラリー) [美術展]

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シャガール 三次元の世界
2017年9月16日(土)~12月3日(日)
東京ステーションギャラリー

まだ若かりし20代の頃、私が最初に好きになった画家がシャガールです。それ以来、何度もシャガールの展覧会に足を運んできました。でもそこに展示されていたのは油絵か版画ばかり。立体作品を作っていたなんて全く知りませんでした。

シャガールの魅力はかわいらしさと不気味さがないまぜになった不思議な世界に遊ばせてくれること。もちろんそれは自由に描かれた絵画の方がダントツです。でも立体作品もやはりまがいもないシャガール世界。花束、山羊、ロバ、牛、鶏など、絵画に頻出するモチーフがそのまま壷やレリーフになっていて、シャガール好きにはたまりません。特に二次元では表現できない丸みやくぼみにはうっとり。ロバの壷のふっくらとした立ち姿はまるで女性の体のラインですし、男女が絡み合う大理石の彫刻からは幸せオーラが立ち上っています。「愛の画家」と呼ばれるシャガール、健全なエロティシズムを絵画以上に感じました。

シャガールの知らなかった一面を取り上げて見せてくれた展覧会。東京ステーションギャラリーはいつも新しい世界を垣間見せてくれる美術館です。今夏の「不染鉄」展でも素晴らしい日本人画家を知ることができました(そのときの記事)。2013年の「大野麥風」展も忘れられません(そのときの記事)。ここに来ると私の美術フィールドが確実にぐっと広がります。


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