「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」展(京都国立博物館):仏画編 [美術展]

国宝展 京博.jpg
開館120周年記念 特別展覧会 国宝
2017年10月3日(火)~11月26日(日)
京都国立博物館 平成知新館

お気に入りとの再会と新しい出会いを楽しみにⅡ期とⅣ期の2回足を運びました。お祭りみたいなものだから混雑は想定内。これだけランダムに名品が並ぶと自分の好みがよーくわかります。やっぱり仏画の前で足がとまりました。

・釈迦金棺出現図(京都国立博物館)
涅槃に入られたお釈迦様がイエスキリストのようによみがえった場面を描いています。涅槃図といえばお釈迦様は横たわっているのでとても珍しい構図。周りに集まっている衆生もこころなしかビックリしているように見えました。その人物の何人かに小さく名前が書きこまれているのを単眼鏡で見つけて急に親近感。“〇〇さん、よかったね!”と一緒に喜びたくなりました。名前って大事ですね。

釈迦金棺出現図.jpg


釈迦如来像(赤釈迦)(京都・神護寺)
いならぶ仏画の中でも神秘度が極まっていて、博物館の中にも関わらず抑えようもない霊力を発散していました。すべて見透かすようなまなざしで、男性にも女性にもみえる高貴なお顔。近寄りがたく畏れ多く、美しいけれど美術品とはなりえない生きている仏画です。切れ長の目をよくよくみると黒目には赤い縁取り、白目の目尻には青が入っています。赤い衣に施された截金もめちゃくちゃ手が込んでいます。

千手観音像(東京国立博物館)
千手観音は多くの手をどう処理するかが難しいので、仏像も仏画もあまりグッときません。でもこの千手観音は多手を破綻なくまとめて、違和感がありません。東博の所蔵なのに今までその存在を知りませんでした。嬉しい出会いです。

・両界曼荼羅図(京都・教王護国寺)
東寺の暗くて狭い宝物館でみるのとは全く違ってみえました。華々しいステージでパワー全開、きらきらして鮮やかで圧倒されます。これが9世紀の作なんて信じられません。当時これだけのものを造る技術があったという事実に、そして21世紀の現代まで1200年もその威力を失わずに伝えられてきた事実に、ただただひれ伏すしかありません。解説によると中国製という説もあるそうです。そうかもしれないな、と腑に落ちました。

十二天像(京都国立博物館)
この京博の十二天像はあまり良さがわかりません(以前の記事)。平安時代後期の1127年に描かれ、東寺(教王護国寺)での儀式に使われていました。当時の貴族好みの濃厚な耽美主義的作風といわれていて、贅は尽しているけれど、退廃的で気持ちが悪いのです。この十二天像をみると、この後、貴族社会が崩壊していくのも予感できるような気がします。世紀末的というか末法の世というか、ひとつの時代が終わっていくのを象徴しているような仏画です。

孔雀明王像(東京国立博物館)、十一面観音像(奈良国立博物館)
今回、出品された仏画13点のうち、国立博物館の所蔵するものが7点。明治の廃仏毀釈でお寺から放出され、国立博物館の所蔵となっている仏像や仏画は少なくありません。この2点の解説文にはその来歴が記されていました。孔雀明王像は「高野山→井上馨→原三渓→東博」、十一面観音像は「法起寺→井上馨→益田鈍翁→奈良博」と次々と所蔵者が変わっています。なんだか複雑な気持ちになりますね。お金で売買するようなものではないと思うけど、お寺を救ったのも事実だからなぁ。


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